月と子 (3篇)

梅雨の晴れ間


長雨がやっと上がったある日の夕方、南東の空にきれいな月が現れた。息子に、お月さんだよ、きれいだねと語りかけ、しばし爽やかな風に吹かれていた。息子はこの時初めて、月というものを認識し始めたように思う。

次の日も、美しい月はそこにあった。夜になり、いっそう輝きの増すまあるい月を眺めながら、寝る前の時間を過ごした。月が雲に隠れては、あっち、ないね、あで、あで、と言い、また現れると、あったー!  と嬉しそうに言う。一歳九ヶ月。月を眺めて会話のできる日がやってきたんだと思い、私も嬉しかった。

歌を歌い始めたらコテンと寝て、月明かりが息子の肌を青白く照らし、とても綺麗だと思った。

私は梅雨の時期に生まれ、雨ばかり降るし、これからやってくる主役の夏を前に足踏みしているようで、この季節を特別良いと思ったことはなかった。けれど、この日初めて、いい季節だなと心から思えた。

少し湿った涼しい風は、今だけかも知れない。

梅雨の晴れ間よありがとう。

掲載 FMたちかわ Green Cafe vol.33

生かされてる日々


自転車乗って、帰り道。
空に切り込みが入ったようなほっそい月が
南西の空に。つき きれーねーと、
次男も言葉が上手になってきた。
情緒が言葉を育てる。
長男もよく、月を見ながら話していた。なつかしい。


今日は寝る前、
 もしママが事故とかで死んじゃって
 この手だけ見つけて
 この手だけしかなくても
 これだけで生きていけるよ
と言って、寝た。

嗚呼、生かされてる日々。
あたしゃあなたのその言葉だけで生きていけるよ。
死んでも生きていけるよ。
そんな一日の終わり。

私はいつかこの日のことを忘れる日が来ても、
だいすきだったこと、
愛していたことは、
死んでも忘れたくない。
この小さな手の温もりを守るため、
私の中の弱さを、強さに変えて生きていく。
光と影


寝室からは時々月が見えるので、
月明かりの差し込む晩もあり、
布団には光と影が落ちる。

昨日だか一昨日もそのようになっていて、
長男が嬉しそうに寝転んだ。そして、
光の当たってる所からじゃないと
お月様は見えないんだよ
と至極当たり前の事をふいに呟いた。
当たり前すぎて私は忘れていたので、
っは とした。

影からは光を見る事はできない。
壁に遮られて、
光の源は見る事ができない。
自分も見つかることはない。
明るい所に出れば
自分も顕になるけれど、
そのぶん光を見ることができる。

そう信じて頑張ろう。

月の光は太陽の光でもあるんだよと、
言いたくなったけど。
そんな事は野暮だなと思って、
言うのをやめた。

つまらない大人になってしまったなぁ

つまらない大人なりに、
夢を持ってがんばろう。